2007年11月27日

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三題噺って難しいねってお話

リボン、教会(キョウカイ)、足つぼマッサージ

今年の4月に晴れて大学生になったわけだが、思い描いていた楽しい大学生ライフなど気が弱く、面倒くさがりで根暗で対人恐怖症の僕には微塵も用意されているはずもなかった。大学生になればきっと変われると思っていた自分が馬鹿だった。

理系の大学のせいか、必修授業や実験などで4,5人の班に分かれることが多かった。まさか大学生になってこんなにも班行動をさせられる羽目になるとは誤算だった。当然、僕はあまり者の班になり、その中でも浮いていた。

そしてもう一人浮いていたのがアズマだった。アズマとは別にウマがあったとか趣味が同じだったとかではなく、集団からはじかれはじかれしているうちになんとなく一緒にいることが多くなったってだけの関係だった。少なくとも僕はそれ以上の関わりを持ちたいとは思っていなかった。

1時間目の有機化学の講義の後に、いつの間にか後ろの席に座っていたアズマが

「今日、解析力学の授業が終わった後そのまま教室で待ってて」

と、唐突に言った。

「え?あぁ、実験のレポートのこと?」

最初は何のことか分からなかったが、そういえば来週までに実験のレポートを出さなければならなかったことを思い出した。

「え?そ、そう、実験のレポートで分からない所あったんだ。」

それじゃよろしく、といってこちらの返事も聞かずにそそくさと教室を出て行ってしまった。少し様子が変で気にかかったのだが、僕も実験のレポートで分からない所があったし友達のいない僕には好都合だった。

2時間目、3時間目はアズマとは別の講義を取っているので顔をあわせる事もなく過ごした。そして4時間目の解析力学、アズマもこの講義を取っているはずなのに出席していなかった。

自分から言っておいてすっぽかすつもりかよ。僕はちょっと苛々しながらアズマに電話をかけようかどうしようか思案しながら二つ折りの携帯電話を開いたり閉じたりしていた。結局、電話をかける決心もつかないまま教室には僕一人取り残されてしまった。どうせレポートの提出日はまだ先だし、明日もアズマと同じ講義があるから今日は帰ろう。そう思い教室を出た。


そこには、まるでアニメの主人公がつけていそうな真っ赤で馬鹿げたくらい大きなリボンをした美少女がそこに立っていた。いや・・・正しくは青年なのだが。

その馬鹿げたリボンさえ似合ってしまっている清楚で可憐な立ち姿は女にしか見えないのだが、ほんのり薄く化粧された顔は、どう見ても絶望的にアズマだった。アズマは体が華奢で、すっとした顔立ちをしていたし長髪だったたので中性的な雰囲気は持っていた。・・・持ってはいたが、信じられない。顔は確かにアズマだと認識できるのだが信じられない。あまりの衝撃に相当長い間固まっていたと思う。

「あ、あの・・・僕はこういう趣味があるんだ。で、でも、女装が趣味ってだけで好きなのは女性だし、そっちの趣味はないから・・・」

「そ、そうなんだ・・・」

ようやく言葉を発することは出来たが、まだ頭の中は固まったままだった。

固まった頭に追い討ちをかけるようにアズマは続けた。

「今日これから少し付き合ってもらえないかな?」

「は? えと、その前にこの状況がまだ理解できてないんだけど・・・」

「ネットで知り合った女装が趣味の人たちとオフ会をやるんだ。」

「ちょっとまって。ちょっとまって。無理だよ。他をあたってくれよ。」

「他って・・・他に頼める人なんていないよ。分かるでしょ?」

確かに、ここ数ヶ月同じ大学で過ごしてきたんだ、僕同様アズマにも友達がいないことぐらい分かっていた。アズマはネット友達に彼氏がいると嘘をついてしまったらしい。その辺の詳しい経緯はどうでも良かったが、もう後には引けない状況なのだそうだ。僕も最初は本気で断ったし半ばキレ気味だったと思う。しかし、こともあろうにこのアズマという男、女の武器を使ってきやがった。他に頼める人がいない、本当にフリをするだけでいい、これっきりにするからなどと泣いて懇願してきたのだ。頭ではアズマだと分かっているはずなのだが、目の前にいるのはどう見ても泣き顔の美少女なのだ。とうとう僕は負けてしまった。もう半分以上やけっぱちで了承してしまっていた。


数時間後、僕はもうどうにでもなれという自暴自棄な気分でカラオケボックスで3組のカップルがそれぞれの彼氏を紹介しあっている風景をながめていた。

「私の彼氏のニシノくんです。同じ大学に通ってます。」

にこにこと屈託のない笑顔でアズマは僕を紹介した。

自分の名前を呼ばれ否応なしに現実に引き戻された僕は、事務的に

「どうもニシノです。」

と言って、軽く会釈した。そして、初めて他の4人の男の顔を確認した。この時急に、この4人の男に僕がアズマの彼氏だと思われていることを実感し、足つぼマッサージをされているかのような痛みがぐりぐりと僕の心を襲い、その痛さに身もだえして声が漏れそうになるのを必死に我慢した。

「楽しもうね!」

あまりに可愛すぎる笑顔で僕に同意を求めてくるアズマの顔を見て目眩と頭痛が加わった。

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posted by tsukamoto at 00:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | ネタ

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